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浴槽水の残留塩素は毎日測っている。記録も残している。それでも「これで足りているのか」という不安が消えない——温浴・スポーツ施設の衛生管理担当者からよく聞く言葉です。
この不安には理由があります。国の指針が施設に求めているのは、浴槽水の消毒だけではないからです。厚生労働省の告示は、対策の目的をはっきりと別のところに置いています。
この記事では、公的な指針・要領・マニュアルが実際に何を求めているのかを整理したうえで、対策の全体像と、対策にかかるコストをどう捉えるべきかをまとめます。個別の手順や薬剤比較には深入りせず、自施設がいまどこに立っているかを判断できる地図として使えることを目指しました。
なお、実際に適用される基準や運用は、施設の構造・泉質・所在する自治体の条例により異なります。本記事は一般的な情報提供であり、行政判断に代わるものではありません。自施設の管理内容については、管轄の保健所および精度管理を行っている水質検査機関にご相談ください。
目次
レジオネラ属菌は自然界の土壌や水中に広く存在する細菌です。問題になるのは、それが人工的な水利用設備の中で増殖したときです。
厚生労働省告示第264号(レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針)は、前文で感染の構造をこう説明しています。
レジオネラ属菌は、入浴設備、空気調和設備の冷却塔、給湯設備、加湿器等の水を使用する設備に付着する生物膜に生息する微生物の細胞内で大量に繁殖し、これらの設備から発生したエアロゾルを吸入することによって感染することが知られており
ここで押さえるべき点が2つあります。第一に、増殖の場は水そのものではなく「設備に付着する生物膜」であること。第二に、感染経路はエアロゾル(細かい水滴)の吸入であることです。この2点が、以降のすべての対策の前提になります。
上記の性質から、施設内で注意すべき箇所は2種類に分かれます。
菌が滞留・増殖しやすい場所は、循環配管、ろ過器、集毛器、貯湯槽、調節箱、水位計配管、回収槽です。公衆浴場における衛生等管理要領は、ろ過器と配管について「ろ過器に次いで、配管は生物膜の形成場所となりやすい」と明記しています。
エアロゾルを発生させる場所は、シャワー、打たせ湯、気泡発生装置・ジェット噴射装置です。ここは菌が水中にいた場合に、実際の吸入につながる出口にあたります。
つまり浴槽水そのものだけを見ていると、増殖の場も感染の出口も視野から外れます。管理対象は循環系統全体だと捉える必要があります。
レジオネラ症は感染症法に基づく四類感染症であり、診断した医師には全数の届出が義務付けられています。国立健康危機管理研究機構(旧・国立感染症研究所)が公表する感染症発生動向調査の年別一覧によると、届出数の推移は次のとおりです。
ここで注意が必要なのは、この増加をそのまま感染機会の増加と読むべきではないことです。尿中抗原検査の普及など診断技術の向上が報告数の増加に寄与しているとされています。また届出数は診断された症例の数であり、感染者数そのものではありません。
病型の内訳は、2013年から2023年までの届出計20,378例のうち、肺炎型が94.3%、感冒様のポンティアック熱型が4.8%です(2024年5月20日現在)。同期間の届出時の死亡は255例でした。致命率については、厚生労働省の循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル(平成27年改正版)が2008年から2012年の届出時点の死亡を3.2%としており、病原微生物検出情報(IASR)掲載の解説は「免疫不全宿主における致命率は10%を超えており」と記しています。いずれも条件つきの数値であり、単一の致命率として扱えるものではありません。
患者の平均年齢は69.4歳、50歳以上が93.0%を占めます。温浴施設の主要な利用者層と重なる年齢帯です。
そして温浴施設との関係について、厚生労働省の循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルは端的に述べています。
国内で発生する患者の感染源は入浴施設が最も多く、土木・粉塵作業、園芸作業、旅行との関連も指摘されています。
集団感染についても、IASRが2013年から2023年に報道・公表された事例18件を一覧化しており、そのうち13件が入浴・温泉設備を感染源としています。患者数が最も多い事例は2017年3月の広島県の温泉施設で、患者58名・死亡1名でした。
なお、レジオネラ属菌は人から人へは感染しません(厚生労働省リーフレット)。感染は設備由来のエアロゾルを吸入することで起こります。
循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルは、増殖の速さについて「適切な消毒がなされていない場合、レジオネラ属菌は、4〜6時間で倍増します」と記載しています。
また、貯湯槽については公衆浴場における衛生等管理要領が、湯の補給口・底部等に至るまで60℃以上、最大使用時においても55℃以上に保つことを求めています。同要領は貯湯槽の底部について「汚れが堆積しやすく低温になりやすい」と注記し、定期的な滞留水の排水を求めています。
カランやシャワーへの湯温を調節する調節箱についても、マニュアルは「この調節箱内部の湯温は、レジオネラ属菌の繁殖に適した温度となるため注意が必要」としています。温度が下がる箇所、水が滞留する箇所が、そのままリスク箇所になります。
温浴施設のレジオネラ対策に関する公的文書は複数ありますが、法的な位置づけが異なります。ここを取り違えると、自施設に何が求められているのかを見誤ります。
法的拘束力を持つのは、都道府県が定める条例です。公衆浴場法第三条は次のように定めています。
営業者は、公衆浴場について、換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。 2 前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める。
営業者は、公衆浴場について、換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。
2 前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める。
旅館業法第四条にも同趣旨の規定があります。つまり、遵守すべき具体的な基準は各自治体の条例にあります。
一方、国が発出している公衆浴場における衛生等管理要領や各種マニュアルは、地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的助言という位置づけです。全国の自治体が条例を定める際の拠り所として共有され、実務上の標準として機能していますが、それ自体が直接に義務を課すものではありません。厚生労働省告示第264号(レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針)は、感染症法に基づく基本指針を受けた告示として、これらの考え方の基礎に位置します。
実務上の帰結は単純です。この記事で紹介する国の要領・マニュアルの内容は、自施設に適用される基準そのものではなく、その基礎になっている考え方です。実際に守るべき頻度・数値は、管轄自治体の条例と保健所の指導で確認してください。同じ設備構成でも、所在する自治体によって求められる検査回数や配管消毒の頻度が変わります。
業界団体も、これらを踏まえた自主管理基準を整備しています。公益社団法人日本サウナ・スパ協会は「サウナ及びスパ営業施設における衛生確保に関する自主管理基準」(2019年9月)を定め、公衆浴場における衛生等管理要領に加えて会員が遵守すべき基準としています。同基準は浴槽水の遊離残留塩素濃度について国の要領と同じ水準を求めており、高pHの泉質については、レジオネラ属菌の検査により殺菌効果を検証したうえで接触時間を長くするか濃度をやや高く設定するよう求めています。
「うちは銭湯ではないから」という理由で対象外になることはありません。公衆浴場における衛生等管理要領は、一般公衆浴場以外を「その他の公衆浴場」として次のように分類しています。
1) 温湯等を使用し、同時に多数人を入浴させるものであって、保養又は休養のための施設を有するもの 2) 温湯等を使用し、同時に多数人を入浴させるものであって、スポーツ施設に付帯するもの
1) 温湯等を使用し、同時に多数人を入浴させるものであって、保養又は休養のための施設を有するもの
2) 温湯等を使用し、同時に多数人を入浴させるものであって、スポーツ施設に付帯するもの
スーパー銭湯・日帰り温泉・スパは1)に、スポーツクラブやジムに付帯する浴場は2)に該当し、いずれも一般公衆浴場の衛生管理の規定が準用されます。旅館・ホテルの浴場には旅館業における衛生等管理要領が適用されますが、レジオネラ対策として求められる内容に実質的な差はありません。
掛け流しであっても対象外にはなりません。循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルは、厚生労働科学研究の調査結果として「掛け流し温泉施設においても浴槽や貯湯槽、配管その他の設備の生物膜の除去がレジオネラ対策として最も重要であることが示されています」と述べ、循環式浴槽に準じた清掃・消毒を推奨しています。
浴槽水の遊離残留塩素濃度について、公衆浴場における衛生等管理要領は次のように定めています。
浴槽水の消毒に当たっては、塩素系薬剤を使用し、浴槽水中の遊離残留塩素濃度を頻繁に測定して、通常0.4mg/L 程度を保ち、かつ、遊離残留塩素濃度は最大1mg/L を超えないよう努めること。結合塩素のモノクロラミンの場合には、3mg/L 程度を保つこと。また、当該測定結果は検査の日から3年間保管すること。
告示第264号では「通常一リットルにつき〇・二から〇・四ミリグラム程度に保ち、かつ、最大で一リットルにつき一・〇ミリグラムを超えないように努める」とされており、下限の表記が要領と異なります。両方を確認したうえで、自治体の指導に従ってください。
レジオネラ属菌の水質検査については、公衆浴場における水質基準等に関する指針が頻度を定めています。
ろ過器を使用していない浴槽水及び毎日完全に換水している浴槽水は、1年に1回以上、連日使用している浴槽水は、1年に2回以上(ただし、浴槽水の消毒が塩素消毒でない場合には、1年に4回以上。)、水質検査を行い、その結果は検査の日から3年間保管すること。
基準は「レジオネラ属菌が検出されないこと(10cfu/100mL未満)」です。検査は営業者による自主検査であり、同指針は精度管理を行っている検査機関への依頼が望ましいとしています。
なお自治体によってはこれを上回る頻度を求めています。たとえば静岡県は気泡発生装置等を使用している場合に2月に1回以上の検査を、茨城県は気泡発生装置などがある場合に年4回以上の実施を示しています。自施設の所在自治体の規定を必ず確認してください。
ここが本記事で最も重要なパートです。公衆浴場における衛生等管理要領は、設備ごとに作業内容と頻度を定めています。主要なものを整理します。
この表を眺めて気づくことがあります。頻度が毎日・週1回・6か月に1回・年1回と複数の階層に分かれており、しかも対象設備が10点以上あるという点です。さらに実務では、主浴槽・ジェット・露天・水風呂・薬湯といった浴槽系統ごとに、これらの作業が別々に発生します。
遊離残留塩素濃度の測定結果、水質検査の結果は、いずれも検査の日から3年間の保管が求められています。
体制面では、公衆浴場における衛生等管理要領が、本要領に基づく自主管理マニュアルおよび点検表を作成して従業者に周知徹底すること、営業者が自ら責任者となるか従業者のうちから責任者を定めることを求めています。告示第264号にも同旨の規定があります。
ここまで見てきた作業は、それぞれ独立した義務ではありません。すべて1つの目的につながっています。告示第264号は、その目的を明文で示しています。
レジオネラ属菌は、生物膜に生息する微生物等の中で繁殖し、消毒剤から保護されているため、浴槽の清掃や浴槽水の消毒では十分ではないことから、ろ過器及び浴槽水が循環する配管内等に付着する生物膜の生成を抑制し、その除去を行うことが必要である。
同告示は換水についても、同じ趣旨を繰り返しています。
その際、換水のみでは十分ではなく、ろ過器や配管内等に付着する生物膜を除去しない限り、レジオネラ属菌による浴槽水の汚染を防止できないことに留意すること。
公衆浴場における衛生等管理要領も、より詳しく同じことを述べています。
しかも、その生物膜により、外界からの不利な条件(塩素剤等の殺菌剤)から保護されているため、浴槽水を消毒するだけではレジオネラ属菌等の微生物汚染を除去できない。そのため、浴槽水の消毒のみならず常にその支持体となっている生物膜の発生を防止し、生物膜の形成を認めたならば直ちにそれを除去しなければならない。
告示・要領・マニュアルという規範性の異なる3階層が、いずれも同じ結論を述べています。対策の目的はバイオフィルム(生物膜)を残さないことであり、浴槽水の消毒はそれ単独では目的を果たさない、ということです。
「基準どおり管理していたのに検出された」という事象には、公的な説明があります。循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルは、バイオフィルム(生物膜)を除去しなければならない理由をこう解説しています。
レジオネラ属菌は、アメーバの中では遊離残留塩素に対してより抵抗性になり、また塩素による障害から回復しやすくなります。このため、遊離して浮遊するレジオネラ属菌は塩素消毒で殺菌できても、生物膜に生息するアメーバの中では生き残ります。したがって、十分な遊離残留塩素が確認できても、生物膜を除去しないとレジオネラ属菌が検出される場合があります。
同マニュアルは別の箇所でも「残留遊離塩素が規定濃度であっても、生物膜内のレジオネラ属菌の消毒には不十分であり」と述べています。
札幌市保健所のマニュアルは、さらに端的です。
通常の消毒方法(残留塩素濃度 0.4〜1.0mg/L)では、バイオフィルムを除去することはできません。
これは理屈の話ではありません。国自身が、基準の改正理由としてこの問題に触れています。
厚生労働省健康・生活衛生局生活衛生課は、2019年に浴槽水の遊離残留塩素濃度の下限を0.2mg/Lから0.4mg/L程度へ引き上げた理由を、次のように説明しています。
レジオネラ症の感染事例で遊離残留塩素濃度0.2 mg/Lの記録が続いていても, 実際にはその濃度が達成できていなかったか, 効果不十分などがあったため, このような改正となっています。
自治体が公表した個別の事例にも、同じ構造が現れています。
神奈川県小田原保健福祉事務所が報告した2015年の事例(患者7名)では、遊離残留塩素濃度は始業前の9時30分から23時30分まで2時間ごとに測定・記録され、塩素注入装置も正常に稼働し、貯湯槽は62℃に設定され実測値の記録も作成されていました。レジオネラ属菌の検査も年4回の店休日に実施され、それまで検出されたことはありませんでした。それでも集団感染は起きました。同報告書が挙げた原因は、循環ろ過器のろ材が5年以上未交換で劣化し、十分なろ過ができていなかったことです。この施設は49日間の営業停止となりました。
静岡市が報告した2019年の事例(患者13名)では、44検体のうちレジオネラ属菌が検出されたのは7検体で、浴槽水の多くは基準内でした。検出されたのは主にふき取り検体です。同報告書は、浴槽の遊離残留塩素濃度の測定方法が不適切だったこと、ろ過器の逆洗時の塩素濃度が市条例で5〜10ppmと規定されているところ実際は2ppm程度で行われていたことを指摘しています。
広島県三原市が報告した2017年の事例(患者58名・死亡1名)では、原因として衛生管理運営要領の未作成、記録の不正確さ、塩素濃度管理の不十分さと並んで「配管洗浄が10年程度未実施」が挙げられています。
いずれの事例にも共通しているのは、浴槽水の数値ではなく、循環系の設備側に原因があったという点です。
ここまでを整理すると、対策の構造は3層に分かれます。
最上位にあるのが目的です。すなわち、バイオフィルム(生物膜)を生成させず、形成されたら除去すること。中間にあるのが手段です。浴槽水の消毒、換水、ろ過器の逆洗、配管洗浄、温度管理といった個々の作業がこれにあたります。最下位にあるのが指標です。遊離残留塩素の測定値、レジオネラ属菌の検査結果がこれにあたります。
遊離残留塩素は、水中で菌が増えないようにするための手段であり、同時に管理状態が保たれているかを確認するための指標です。しかし目的そのものではありません。この区別を取り違えると、「指標は満たしているのに目的が達成されていない」という状態が生じます。基準内の数値を記録し続けながら検出が起きるのは、この構造によるものです。
この対応関係を、業界団体の実務ガイドが簡潔に整理しています。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会が令和6年3月に発行した「安心・安全なお宿のお風呂手入れの手引き」は、レジオネラ属菌の防止対策の要点として次のように述べています。
浮遊性のレジオネラ属菌に対しては浴槽水中の遊離残留塩素濃度を適正に保つことで対処が可能です。
バイオフィルムは塩素の濃度を保つことや週に1回程度、浴槽の清掃換水前に高濃度の塩素で循環消毒を行うことで抑制につながると考えられます。
遊離残留塩素の濃度管理が受け持つのは、水中に浮遊している菌です。バイオフィルムに対しては、それとは別に週1回程度の高濃度塩素による循環消毒という作業が必要になる、という整理です。日々の測定値が基準内であることと、バイオフィルム対策ができていることは、別の話だということがここからも分かります。
自施設の管理を見直すときは、「残留塩素は基準内か」ではなく「バイオフィルム(生物膜)を残さない状態がつくれているか」を問いにしてください。問いが変わると、点検すべき箇所も変わります。
バイオフィルム(生物膜)を残さないという目的に対して、塩素系薬剤による管理がどこまで届くか。これは水質条件によって変わります。公的文書が指摘している条件は3つあります。
循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルは、この点を数値表つきで説明しています。
塩素系薬剤の消毒効果は、殺菌力の強い次亜塩素酸(HClO)と、殺菌力がその1/100 程度に過ぎない次亜塩素酸イオン(ClO-)の比率により異なりますが、その比率はpH により変動します。以下に示す表のように、pH6.0 では、約97%がHClO で占められていますが、pH7.5 では50%、pH9.0 では3.1%と激減しています。このため、アルカリ性の温泉水では、塩素系薬剤の効果が低下します。
同マニュアルが掲載しているpHと次亜塩素酸(HClO)の関係は次のとおりです。
遊離残留塩素の測定値が同じ0.4mg/Lでも、pH7.0の水とpH8.5の水では、殺菌力の強い成分の割合が8倍以上違うことになります。アルカリ性の泉質を持つ施設で「数値は出ているのに手応えがない」という感覚には、この裏づけがあります。
公衆浴場における衛生等管理要領は、高pHの泉質に塩素系薬剤だけを用いる場合、レジオネラ属菌の検査により殺菌効果を検証したうえで、接触時間を長くするか遊離残留塩素濃度をやや高く設定する(例として0.5〜1mg/L)といった配慮を求めています。
入浴者由来の有機物は、塩素を消費します。国立感染症研究所の研究官による厚生労働科学研究の資料は、その規模感を試算で示しています。入浴者一人あたり0.5gの有機物が持ち込まれると仮定した場合、100人分で50gとなり、これを処理するための塩素消費量は単純計算で10倍に相当するという内容です。
またアンモニア性窒素が存在すると、遊離塩素と反応してクロラミン類が生成します。循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルは次のように述べています。
アンモニア性窒素を1 mg/L 以上含む場合は、遊離塩素を検出するまでには、多量の次亜塩素酸ナトリウムの投入(ブレークポイント処理)を必要とし、現場での濃度調整の困難さや、消毒臭気、消毒副生成物の問題も生じるため
なお、いわゆる塩素臭の正体はモノクロラミンではなくジクロラミン・トリクロラミンであることが、前掲の国立感染症研究所研究官の資料に整理されています。臭いが強いことは、塩素が効いていることを意味しません。
第3節で見たとおり、バイオフィルム(生物膜)の内部は消毒剤から保護されています。加えて、ろ過器の状態が悪いと消毒そのものが成立しなくなることもマニュアルは指摘しています。
塩素系薬剤を注入(投入)するにあたり、ろ過装置のろ材などに微生物が繁殖している場合などには、発泡したり、塩素系薬剤の消費が激しくて必要な塩素濃度を確保できなかったりすることが想定されます。このため、消毒の前には逆洗などの徹底した前処理が必要です。
つまり、バイオフィルム(生物膜)が溜まっているほど塩素は消費され、消費されるほどバイオフィルム(生物膜)が残るという循環が起こり得ます。
次亜塩素酸ナトリウムと二酸化塩素の化学的な性質の違いについては、別記事で詳しく比較しています。
(内部リンク → E2「次亜塩素酸ナトリウムと二酸化塩素の違いを徹底比較」)
目的がバイオフィルム(生物膜)の除去であるなら、次の問いは「そのために何をどれだけやることになるのか」です。ここを具体的に見ておくと、後半のコストの話がはっきりします。
第2節の表を、頻度の側から並べ替えます。
毎日行う作業は、浴槽の完全換水と清掃、集毛器の清掃・消毒、遊離残留塩素濃度の測定と記録、消毒装置の作動確認です。
週1回以上行う作業は、ろ過器の逆洗浄、ろ過器および循環配管のバイオフィルム(生物膜)除去・消毒、水位計配管のバイオフィルム(生物膜)除去、シャワーの通水です。
6か月に1回以上行う作業は、シャワーヘッドとホースの点検です。
年1回以上行う作業は、循環配管内のバイオフィルム(生物膜)の点検と除去、シャワーヘッド・ホースの洗浄と消毒、貯湯槽・受水槽・高置水槽の清掃、給水給湯設備の保守点検、そしてレジオネラ属菌の水質検査です。
これらが、浴槽系統の数だけ並走します。系統ごとに換水頻度も洗浄頻度も別に設定されるため、系統が増えれば作業回数もそのぶん積み上がります。
バイオフィルム(生物膜)の除去手段として公的マニュアルが具体的に示しているのが、高濃度塩素による配管洗浄です。
塩素消毒:高濃度の有効塩素を含んだ浴槽水を、配管の中に循環させることで殺菌する方法です。残留塩素濃度は、循環系内の配管などの材質の腐食を考慮して、5〜10mg/L 程度が妥当です。この状態で、浴槽水を数時間循環させます。
実施頻度について、入浴施設の衛生管理の手引きはさらに踏み込んだ考え方を示しています。
これは日常の残留塩素濃度の常時維持と週に1 回以上の高濃度塩素洗浄を行って生物膜の形成を防ぐことを基本にしています。日常的な高濃度塩素による洗浄を行わずに1年に数回の生物膜を除去するための大がかりな洗浄を行うやり方では、生物膜が形成されてレジオネラ属菌が増殖する危険性があります。
同手引きは「この操作を換水の都度行うことで、循環配管への生物膜の蓄積を防止することができます」とも述べています。つまり、バイオフィルム(生物膜)を溜めない運用を選ぶと、高濃度塩素洗浄は年数回のイベントではなく、週次あるいは換水のたびの定常作業になります。
なお、もう一つの手段である過酸化水素洗浄について、循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルは費用に言及した数少ない記述を残しています。
過酸化水素は、毒物及び劇物取締法で指定された劇物であり、取り扱いには危険が伴い、さらに処理薬品が多量に必要であること、洗浄廃液の化学的酸素要求量(COD)が高いことなども含め、専門の業者による洗浄が必要であり、その費用も高価なものとなります。
日常の作業量を抑えると、その分は検出時に返ってきます。札幌市保健所のマニュアルが定める検出時の対応を、平常時と並べます。
日常の作業量と異常時の作業量は、比例しません。日常を削った分だけ、異常時には営業停止を含む形で非線形に返ってきます。
ここまでの内容を踏まえると、レジオネラ対策のコストが薬剤の単価だけでは決まらないことがわかります。実際には、次の4つの合計です。
第一に薬剤費です。薬剤の単価と使用量の積で、最も目につきやすい部分です。
第二に作業工数です。日常の清掃・測定、週次の逆洗と配管消毒、年次の分解洗浄や貯湯槽清掃にかかる人時、外注する場合の委託費、作業のために営業を止める場合の休業時間がここに入ります。第5節で見たとおり、これは設備点数と浴槽系統数と頻度階層の掛け算で決まります。
第三に検査費です。レジオネラ属菌の水質検査は年1〜2回が国の要求で、消毒方法や自治体の規定によっては年4回、年6回相当になります。改善対応が発生すれば、不検出が確認できるまで再検査が繰り返されます。
第四に再発時の損失です。営業停止期間の逸失売上、対応にかかる工数、行政への報告書作成、そして施設の信用への影響がここに含まれます。
この第四の要素には、他の3つにはない性質があります。金額が事前に見積もれないという性質です。自治体が公表した事例を見ると、営業停止は日数を区切って課されるとは限りません。広島県三原市の事例では処分内容が「管理体制の見直し及び浴槽水でのレジオネラ属菌の不検出を市が確認する日まで」とされ、営業停止から改善報告書の受領までに2017年3月から同年12月までを要しています。神奈川県小田原の事例でも「管理体制の見直し及び浴槽水でのレジオネラ属菌の不検出を所長が確認する日まで」という条件で課され、結果として49日間となりました。埼玉県狭山保健所管内の事例では、営業停止命令の後に営業者が廃業しています。
つまり停止期間は施設の改善速度と検査結果に依存し、着手前には確定しません。薬剤費や検査費のように単価と回数の積で表せる費目ではない、ということです。
薬剤の単価を比べるとき、私たちは第一の要素だけを見ています。しかし公的指針が求めているのは第二の要素の全体であり、第三と第四は第二をどれだけ確実に行えたかに左右されます。
第4節で見た3つの条件——pH、有機物・アンモニア、バイオフィルム(生物膜)そのもの——は、いずれも「同じ作業をしても効果が出にくくなる」方向に働きます。効果が出にくければ、その分を作業量で補うことになります。頻度を上げる、濃度を上げる、接触時間を延ばす、物理洗浄を追加する、といった形です。
作業量が増えれば第二の要素が膨らみます。それでもバイオフィルム(生物膜)が残れば検出が起こり、第三と第四が発生します。
この経路は、必ず起きるものではありません。水質条件が良好で、日常の高濃度塩素洗浄を確実に回せている施設であれば、塩素系薬剤による管理で目的は達成できます。ただし、単価の安さが総額の安さを意味するとは限らない、ということです。
比較の枠組みだけ用意します。数値は自施設のものを入れてください。
年間回数の目安は、第2節の設備別の表と、自治体の条例・要領を突き合わせて算出してください。作業単価・検査単価・委託費については公的な統計が存在しないため、自施設の実績値または見積で埋める必要があります。
ここで薬剤の選択肢に触れます。位置づけを正確にするために、公的文書における二酸化塩素の扱いを先に整理します。
浴槽水の日常的な消毒については、公衆浴場における衛生等管理要領が塩素系薬剤の使用を原則としています。同要領が塩素以外の方法として名前を挙げているのは、モノクロラミン、オゾン、紫外線、銀イオン、光触媒であり、二酸化塩素は含まれていません。したがって、浴槽水の日常消毒を二酸化塩素に置き換えるという運用は、現行の要領が想定するところではありません。この点は誤解のないようにしてください。
一方、配管洗浄については記述があります。循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルは、配管の洗浄・消毒方法を列挙したうえで、次のように記しています。
その他:次亜塩素酸ナトリウムと併用して、水中で二酸化塩素を発生させる薬剤もあり、スライムの除去・消毒を行う方法も用いられています。
また、厚生労働科学研究費補助金による入浴施設の衛生管理の手引きは、配管洗浄の選択肢として二酸化塩素に言及しています。
具体的には、循環配管等の内壁に繁殖した生物膜の剥離効果が高い、過酸化水素水ならびに過炭酸ナトリウムなどの発泡系洗浄剤や二酸化塩素等を用いた洗浄が考えられますが、これらの処理には危険が伴い、適用できる泉質や洗浄廃液の処理などに知識が必要なため、専門業者に相談のうえ消毒方法を選択するとよいでしょう。
同手引きは水質別の対策整理の中でも、弱アルカリ性〜アルカリ性(pH9以上)で遊離塩素の効果が低下する場合、およびアンモニウムイオンが存在して遊離塩素が消費される場合の選択肢として、モノクロラミンや臭素剤とともに二酸化塩素を挙げています。
整理すると、二酸化塩素は浴槽水の日常消毒剤としてではなく、配管・ろ過器のバイオフィルム(生物膜)対策の手段として、また塩素が効きにくい水質条件での選択肢として、公的文書に登場します。
クリアンス(CREINS)は、水に投入することで二酸化塩素を発生させるタブレット型の製品です。上記の位置づけどおり、遊離残留塩素の管理は塩素系薬剤で継続したうえで、循環系のバイオフィルム(生物膜)対策に用いる使い方になります。設備の改修を前提とせず、既存の管理に組み込めます。
薬剤の単価は次亜塩素酸ナトリウムより高くなります。判断の際に比べていただきたいのは、その単価差ではなく、第6-1節の4要素を合計した金額です。バイオフィルム(生物膜)を残さない状態を、年間を通じてどれだけの作業量で維持できるか。そこまで含めて初めて、比較が成立します。
高濃度配管洗浄における使用量の目安は、総水量1トンあたり20錠(10トンあたり200錠)です。自施設の総水量から必要量を試算できます。
(使用量シミュレーターを埋め込み)
なお、二酸化塩素を用いる場合の留意点も公的文書に記載があります。循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルは「二酸化塩素は、生成装置によっては毒性のある未反応の亜塩素酸(イオン)が残留して、水中の亜塩素酸濃度が高くなることが考えられ、残留消毒剤濃度の測定に注意が必要です」としています。導入にあたっては、泉質・設備条件を踏まえた設計と、管轄保健所への確認をあわせて行ってください。
クリアンスは第三者機関(日本食品分析センター)による試験データを備え、温浴・スポーツ施設を含め全国100施設以上で導入されています(CLOX社データ)。
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(内部リンク → E1「二酸化塩素タブレットの選び方・導入判断」)
同じ「レジオネラ対策」でも、設備構成によって手を付けるべき順序は変わります。
大規模温浴施設・スーパー銭湯は、浴槽系統が多く、系統ごとに換水・逆洗・配管消毒が発生します。作業総量が最も大きくなるタイプであり、系統ごとの作業頻度を一覧化して、抜けている系統がないかを確認するところから始めるのが現実的です。
ジム・スパのシャワー・浴室は、営業時間外に水が滞留する時間が長く、使用頻度の低い系統が生じやすい構成です。要領が定めるシャワーの週1回以上の通水、ヘッド・ホースの6か月に1回以上の点検と年1回以上の洗浄・消毒が、実際に運用に乗っているかが要点になります。なお規模が小さければ安全というわけではありません。IASRが一覧化した集団感染事例には、スポーツクラブの入浴設備を感染源とする事例(2015年2月・新潟県、患者2名)も含まれています。
プール・フットバスは、利用者数に対して水量が限られ、有機物負荷が高くなりやすい構成です。なお遊泳用プールには公衆浴場とは別に遊泳用プールの衛生基準が適用されます。同基準では、プール水そのものにレジオネラ属菌の基準は置かれておらず、気泡浴槽・採暖槽などエアロゾルを発生させやすい設備や水温が比較的高めの設備について、年1回以上の検査で検出されないことの確認が求められています。
小規模施設・24時間風呂は、換水頻度が低く、配管容積に対する水量の比率が高くなりがちです。配管内のバイオフィルム(生物膜)が水質に与える影響が相対的に大きくなります。
自治体が公表している自主点検表の項目を参考に、確認すべき点を整理しました。石川県のレジオネラ感染防止対策実施状況点検表、札幌市の施設管理計画書の記載項目に対応させています。
水質管理について。浴槽水を塩素系薬剤で消毒しているか。残留塩素測定器を用いて、時間を定めて頻繁に測定しているか。測定値は基準に適合しているか。測定結果を記録し3年間保存しているか。換水は毎日または週1回以上実施しているか。レジオネラ属菌の自主検査を規定の頻度で実施し、結果を3年間保存しているか。
設備管理について。週1回以上、ろ過器を逆洗し消毒しているか。ろ過器と併せて循環配管のバイオフィルム(生物膜)除去・消毒を行っているか。年1回以上、循環配管内のバイオフィルム(生物膜)の状況を点検しているか。集毛器を毎日清掃・消毒しているか。水位計配管のバイオフィルム(生物膜)除去を週1回以上行っているか。貯湯槽の温度を60℃以上に保ち、点検・清掃を実施しているか。シャワーの通水を週1回以上、ヘッド・ホースの点検を6か月に1回以上、洗浄・消毒を年1回以上行っているか。気泡発生装置に連日使用の浴槽水を使っていないか。打たせ湯・シャワーに循環している浴槽水を使っていないか。消毒装置の送液ポンプ・注入弁の作動を毎日確認しているか。
体制について。自主管理マニュアルと点検表を作成しているか。責任者を定めているか。従業者に周知しているか。検出時の連絡先(管轄保健所・検査機関)を把握しているか。
これらは国の要領と自治体の点検表に対応する項目です。自施設に適用される具体的な頻度・基準は、管轄自治体の規定を必ず確認してください。
すでにレジオネラ属菌が検出されている場合は、この記事の内容より先に対応すべきことがあります。
まず管轄の保健所および水質検査機関に相談してください。営業継続の可否や公表の要否を自己判断しないでください。検出時の初動の流れと、その後の恒久対策の考え方は別記事に整理しています。
(内部リンク → A3「レジオネラが検出されたら|当日からの対応の流れと再発防止」)
▼ 検出・繰り返しでお急ぎの方(対策の相談):[水質管理の相談はこちら]
この記事の要点は3つです。
第一に、公的指針が施設に求めているのは、浴槽水の水質管理と、設備ごとの洗浄・消毒の両方です。設備は10点以上あり、頻度は毎日から年1回まで複数の階層に分かれ、それが浴槽系統の数だけ並走します。
第二に、それらの作業が向かっている目的は、バイオフィルム(生物膜)を残さないことです。告示・要領・マニュアルが一致して「浴槽水の消毒だけでは十分ではない」と述べています。遊離残留塩素の測定値は、その目的に向かうための手段であり、状態を確認するための指標です。目的そのものではありません。
第三に、したがって手段を選ぶときに比べるべきは、薬剤の単価ではありません。バイオフィルム(生物膜)を残さない状態を年間維持するために必要な、薬剤費・作業工数・検査費・再発時の損失を合計した総額です。単価の安い選択が、作業量と再発リスクを通じて総額を押し上げることがあります。
自施設の総額がどうなっているかは、第6-3節のワークシートで確認できます。そのうえで、いまの方法で目的が達成できているかを判断してください。
▼ 自施設の配管・浴槽水で試す(初回トライアル・無料サンプル):[サンプル・トライアルはこちら]
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Q. レジオネラ対策は、遊離残留塩素の管理だけで十分ですか?
A. 厚生労働省告示第264号は「浴槽の清掃や浴槽水の消毒では十分ではない」と明記し、ろ過器や循環配管に付着するバイオフィルム(生物膜)の生成抑制と除去が必要としています。遊離残留塩素の管理は必要ですが、それだけでは求められている対策を満たしません。
Q. 循環式浴槽で特に注意が必要な設備はどこですか?
A. バイオフィルム(生物膜)が形成されやすい循環配管、ろ過器、集毛器、水位計配管、貯湯槽、調節箱と、エアロゾルを発生させるシャワー、打たせ湯、気泡発生装置です。公衆浴場における衛生等管理要領は、ろ過器に次いで配管がバイオフィルム(生物膜)の形成場所となりやすいとしています。
Q. 浴槽水の水質検査はどのくらいの頻度で必要ですか?
A. 国の指針では、毎日完全換水している浴槽水は年1回以上、連日使用している浴槽水は年2回以上、塩素消毒でない場合は年4回以上とされています。ただし自治体により上乗せがあり、気泡発生装置がある場合に年4回以上や2月に1回以上を求める例があります。管轄保健所にご確認ください。
Q. 塩素をきちんと管理しているのに検出されるのはなぜですか?
A. 循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルは、バイオフィルム(生物膜)に生息するアメーバの中では菌が塩素に対して抵抗性を持つため、十分な遊離残留塩素が確認できてもバイオフィルム(生物膜)を除去しないと検出される場合がある、と説明しています。測定している場所(浴槽水)と汚染が生じている場所(配管・ろ過器の内部)が異なることも背景にあります。
Q. アルカリ性の温泉では塩素が効きにくいと聞きますが、本当ですか?
A. 同マニュアルは、殺菌力の強い次亜塩素酸の割合がpHにより変動するとして数値表を示しており、pH7.0で76.0%、pH8.0で24.0%、pH9.0で3.1%としています。同じ遊離残留塩素濃度でも、pHによって実際の効き方が変わります。
Q. 二酸化塩素は浴槽水の消毒に使えますか?
A. 公衆浴場における衛生等管理要領は浴槽水の消毒に塩素系薬剤の使用を原則としており、塩素以外の方法として挙げているのはモノクロラミン、オゾン、紫外線、銀イオン、光触媒です。二酸化塩素はこの列挙に含まれていません。一方、循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルは、配管洗浄について次亜塩素酸ナトリウムと併用して水中で二酸化塩素を発生させる薬剤によるスライムの除去・消毒に言及しています。クリアンスはこの配管・ろ過器のバイオフィルム(生物膜)対策として用いる位置づけです。
Q. 二酸化塩素は次亜塩素酸ナトリウムより薬剤単価が高いと聞きますが、コストはどう考えればよいですか?
A. 単価は高くなります。比較の際は薬剤費だけでなく、作業工数、検査費、再発時の損失を合計した総額でご検討ください。公的指針が求めているのはバイオフィルム(生物膜)を残さない状態をつくることであり、その達成に必要な作業量まで含めて初めて比較が成立します。なお具体的な金額は施設の規模・系統数・水質条件により大きく異なるため、本記事では試算値を示していません。
Q. 設備の改修は必要ですか?
A. クリアンスはタブレットを水に投入する方式のため、基本的に設備の改修を前提としません。ただし循環系統の構成により運用方法が異なるため、導入前に施設の状況を確認させてください。
Q. レジオネラが検出された場合、営業を止める必要がありますか?
A. 対応や営業継続の可否は、検出値・施設状況・自治体の指導により異なります。まず管轄保健所と検査機関にご相談ください。本記事は行政判断を代替するものではありません。
Q. 対策の効果はどのように確認すればよいですか?
A. レジオネラ属菌の水質検査に加え、循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルは、バイオフィルム(生物膜)の除去の目安としてATP拭き取り検査に言及しています。厚生労働科学研究により浴槽壁等10cm四方の清浄度基準値(1,000 RLU)が提案されています。
法令・指針・要領
技術マニュアル・手引き
発生動向・事例
法令
業界団体
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、行政判断・医学的判断・特定の効果を保証するものではありません。実際に適用される基準・頻度は施設の構造、泉質、所在する自治体の条例により異なります。自施設の管理内容および検出時の対応については、管轄の保健所および精度管理を行っている水質検査機関にご相談ください。製品の効果は水質・設備・使用条件により異なります。使用にあたっては製品資料および注意事項をご確認ください。