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2025年のSHIFT事業では、補助対象の条件や申請要件に変更が加えられました。
省CO₂型システムへの改修支援事業では「単純な高効率化のみは対象外となり燃料転換・電化などが求められる」、DX型CO₂削減対策実行支援事業では「DX要素の導入が必須となり環境省に登録されたDX支援機関の関与が条件に加わる」などです。
本記事では、SHIFT事業2025年版の最新情報をもとに、各制度の概要やポイント、公募スケジュールを整理しました。
さらに、実際に補助金を活用した企業の取組事例を紹介しながら、自社での活用を具体的に検討する際に役立つ情報をお届けしています。
省エネ・脱炭素投資を確実に進めたい企業担当者さまは、ぜひご参考にしてください。
目次
SHIFT事業(Support for High-efficiency Installations for Facilities with Targets)は、工場や事業場における脱炭素化を加速させるため、先進的な省CO₂技術の導入を支援する補助制度です。
電化・燃料転換・熱回収などによってCO₂排出量を大幅に削減する取組を対象に、最大5億円の補助が受けられます。
さらに、DX(デジタル技術)を活用した運用改善など、省エネ効果が即座に得られるモデル的な取組も支援対象です。国の2050年カーボンニュートラル実現に向けた、重要な政策のひとつとなっています。
2025年は、令和6年度補正予算30億円、令和7年新規予算額27.86億円にて、公募が決定しました。
省CO₂型システムへの改修支援事業は、中小企業などが行う電化・燃料転換・熱回収といった改修により、CO₂排出量を大幅に削減する取組を支援するものです。工場や事業場単位で15%以上、主要なシステム単位で30%以上のCO₂削減が求められます。
対象となるのは、既存設備の撤去や稼働停止を伴い、一定水準以上の効果が見込まれる「電化」「燃料転換」「熱回収」等の取組です。単純な高効率化では対象外となる点には注意が必要です。
主な補助対象設備・要件など、概要は次のとおりです。
(※1)11の要件を簡単にまとめると、以下のとおりです。(1)CO₂削減率の達成:工場・事業場単位で15%以上、または主要システム単位で30%以上のCO₂削減を実現すること。(2)排出量の算定:所定の様式に基づいて、基準年度のCO₂排出量を算定できること。(3)CO₂削減計画書の提出:削減内容を記載した「CO₂削減計画書」を申請時に提出すること。(4)効果の定量性:設備導入によるCO₂削減およびランニングコストの削減効果を数値で把握できること。(5)投資回収年数:補助対象事業の投資回収年数が3年以上であること。(6)費用対効果:費用対効果が10万円/t-CO₂以下であること。(7)運用改善の実施と報告:現状の設備の使用状況を点検し、必要な運用改善を実施し、その結果を報告書にまとめること。(8)EEGS報告の実施:補助金報告とは別に、EEGS(排出量報告システム)による報告を行うこと。(9)第三者検証の実施(大企業のみ):大企業は基準年度の排出量について第三者検証を受け、その結果を報告書に記載すること。(10)補助の重複禁止:同年度内に、別のSHIFT関連補助金により設備を導入済みである工場・事業場でないこと。(11)連名申請の完了条件:連名による共同設備導入の場合、全申請者の事業が3年以内に完了し、それぞれ要件を満たすこと。(参考:省CO₂ 型システムへの改修⽀援事業公募要領、p.17~18)
(※2)単純な高効率化について補足:SHIFT事業では、燃料転換や電化を伴わない「単純な高効率化」の設備更新は補助対象外です。たとえば、同じ燃料種のまま設備を更新する場合や、LNGから都市ガスへの切り替えなどは、CO₂削減効果が不十分とされ対象となりません。一方、レジリエンス目的などで一部高効率化を含むケースは、一定条件下で補助対象となることがあります。
DX型CO₂削減対策実行支援事業は、中小企業等がDX(デジタル技術)を活用し、工場または事業場設備の運転管理や省エネ制御を通じてCO₂排出量の削減を図る取組を支援するものです。
2025年度よりDX要素の導入が必須となっており、モデル性の高い事例については広く公表される予定です。
主な補助対象要件・経費など、概要は次のとおりです。
(※3)a~gの要件を簡単にまとめると、以下のとおりです。(a) 年間CO₂排出量が50〜3,000トン未満の国内工場・事業場であること(基準は令和6年度)。(b) 環境省に登録されたDX支援機関の支援を受けていること。(c) DXシステムを導入または既存のDXシステムを活用し、計測を行うこと。(d) 運用改善など設備導入以外の対策を3つ以上検討し、複数を実施計画に位置づけること。計画には必ず1件以上のDX対策を含め、実施・報告すること。(e) (改修支援事業を予定する場合)複数の運用改善等の対策をすでに実行に移していること。(f) 設備改修を含む計画の場合、策定から2年以内に着手すること。(g) EEGS(排出量報告システム)を用いた排出量報告を実施すること。(参考:DX型CO₂削減対策実行支援事業公募要領、p.4~5)
特に令和7年度から(b)(c)にあるように「DX要素を入れなければならない」「環境省に登録されたDX支援機関の支援を受けなければならない」という点が、要件になりました。
省CO₂型システムへの改修支援事業・DX型CO₂削減対策実行支援事業ともに、公募スケジュール(期日)は同日時となっています。次のとおりです。
※2025年6月4日現在、三次公募に関する公式な発表はありません。ただし、例年の傾向を踏まえると、今後「三次公募」が実施される可能性があります。
また、SHIFT事業のうち昨年度の支援となる令和6年度「省CO₂型設備更新支援(C.中小企業事業)」の枠については、間接補助事業者の六次公募を次の期間実施しています。
第1回の受付は2025年5月16日(金)で終了しており、公募が終了するまで、各月の第1⾦曜⽇、第3⾦曜⽇を締切りとして、各期間内で審査ののち採択事業者を順次決定しています。
省CO₂型設備更新支援(C.中小企業事業)の公募は、上記のスケジュール内で予算の上限に達し次第終了となります。
省CO₂型システムへの改修支援事業・DX型CO₂削減対策実行支援事業の主な提出書類は、次のとおりです。
提出書類ごとに詳細な要件があるほか、審査の過程で追加書類の提出や、電話・メールでのヒアリング実施を求められる可能性もあります。
令和7年度のSHIFT事業では、補助対象の要件や支援内容に一部変更が加えられました。省CO₂型システムへの改修支援事業では、材料費と工事費の合計に対して1/3の補助が受けられる点は従来と同様ですが、令和7年度からは「同等の設備への更新」のみでは補助対象になりません。
たとえば、古い石油ストーブをCO₂削減効果のある電化機器へ変更するなど、燃料転換等の削減効果が明確な内容が求められます。
また、DX型CO₂削減対策実行支援事業では、DX要素の導入が申請要件として明記され、環境省に登録されたDX支援機関の支援を受けることが必要になりました。補助上限額は従来の100万円から200万円へと引き上げられているのも、2025年の特徴といえます。
SHIFT事業の活用に適したタイミングは、設備の更新時期が近づいているときや、エネルギーコストの上昇に課題を感じているときです。
老朽化した設備を更新する際に、CO₂削減効果の高い機器への切り替えや、DX技術による運用改善を同時に行えば、補助金を活用しながら省エネと脱炭素の両立を図れます。
また、取引先や親会社から環境対応を求められている場合にも、SHIFT事業は信頼性の高い支援制度として活用しやすく、社内外への説明材料としても有効です。
SHIFT事業では、支援対象や補助の要件が年度ごとに見直されるため、毎年制度内容に違いがあります。
以下で紹介する事例は、過去にSHIFT事業を活用して実施されたものであり、現在の公募要領とは一部異なる点も含まれますが、設備の更新内容や削減効果の捉え方、申請までの流れなど、今後の活用を検討するうえで参考になるものです。
ご紹介する事例は、次の3つです。
それぞれの概要や省エネ効果などを詳しく解説します。
金属製品の製造をおこなう事業者では、SHIFT事業のDX支援を活用し、工場内の連続熱処理炉や油槽ヒーター、空調などの設備に対して、ポータル通信電流計を用いたDXシステムを導入。電力使用の見える化と稼働実態の把握により、運用改善を実施しました。
具体的には、休止日稼働や余剰稼働の抑制、ヒーターの間欠運転の導入、不要なエリア空調の停止など、複数の対策を組み合わせたことで、以下の省エネ効果をえられています。
【省エネ効果】・エネルギーコスト削減額:約741万円 / 年・CO₂排出量削減:636t-CO₂ / 年 → 508t-CO₂ / 年(▲20.2%)・削減対象設備:連続熱処理炉、油槽ヒーター、空調設備など・実施対策数:4件(うち3件でCO₂削減効果あり)
(参考:環境省「令和5年度SHIFT事業|DX型計画策定支援活用事例」)
ある施設では、SHIFT事業の補助を活用し、施設内で使用していた温水ボイラー・吸収式冷温水機などの老朽設備を対象に、省エネ性能の高い機器への更新や燃料転換を実施。
具体的には、重油からLPガスへの転換、EHPへの切り替え、高効率ヒートポンプチラーの導入などを行いました。
さらに、屋上には太陽光パネル(151kW)も設置し、自家消費型の再生可能エネルギー活用も開始しています。
【省エネ効果】・エネルギーコスト削減額:約450万円 / 年・CO₂排出量削減:1,804t-CO₂ / 年 → 1,326t-CO₂ / 年(▲26.5%)・削減対象設備:ボイラー、ヒートポンプチラー、EHP、太陽光パネルなど・補助金額:約7,180万円
(参考:環境省「令和5年度SHIFT事業|設備更新支援A事業活用事例」)
鉄鋼業を営む事業者では、製造工程の主燃料を重油からLNG(液化天然ガス)へと転換する取り組みを実施しました。
キルンおよびドライヤー設備にLNGバーナーを導入したほか、これに伴いエネルギー供給設備も更新。主要なニッケル製錬燃焼システムにおいては、42.8%ものCO₂削減効果を確認しています。
【省エネ効果】・CO₂排出量削減(事業所全体):60,714t-CO₂ / 年 → 45,797t-CO₂ / 年(▲24.6%)・主な対策:キルンLNGバーナー導入(13,479t削減)、ドライヤーLNGバーナー導入、燃焼制御装置の導入 など・補助金額:約1億6,667万円
(参考:環境省「令和5年度SHIFT事業|設備更新支援B事業活用事例」)
SHIFT事業では、事前に「診断支援機関」による診断を受けてから補助金を申請すると、審査時に加点される仕組みがあります。採択において評価を高めるには、診断を踏まえた設備更新を計画に組み込むことが重要です。
また、工場・事業場のエネルギー使用状況やCO₂削減の可能性を専門的に分析し、より効果的な改修計画の立案につなげられます。
さらに、DX型CO₂削減対策実行支援事業においては、DX支援機関の支援を受けることが、必須条件になりました。診断は環境省が定めた登録支援機関に依頼する必要があり、任意の業者では加点対象とはなりません。
スリーベネフィッツ株式会社は「SHIFT事業支援機関」に認定されています。補助金のご相談からDX型支援、補助金の申請代行まで幅広くご相談いただけます。ぜひお気軽にお問い合わせください。〈省エネ診断や補助金申請の代行まで依頼したい事業者さまお問い合わせはこちらから ▶︎〉
SHIFT事業では、環境省に登録された支援診断機関による診断を受けておくことで、診断結果を今後3年間、補助金申請時に活用できます。
今年は予算の都合で申請を見送る場合でも、診断だけ先に受けておけば、翌年度以降の申請にそのまま活用可能です。今年は申請が間に合わなさそうという企業さまは、今年は診断だけでも受けられると、翌年度以降の申請時に焦らずに対応ができます。
設備の更新を中長期的に検討している企業さまも、まずは「どの部分に改善の余地があるのか」を把握する手段として、まずは支援機関の診断を検討してみてはいかがでしょうか。
「省エネや脱炭素に取り組みたいけれど、何から始めればいいのか分からない」「補助金を活用したいけれど、自社に合った制度が分からない」といった場合は、ぜひスリーベネフィッツにご相談ください。
ご状況を伺いながら「このような補助金を使える可能性があります」といった具体的なアドバイスのご案内が可能です。
また、これまでの豊富な実績から、補助金の申請、設備工事の見積や手配、施工管理、報告書の作成といった一連の流れを、すべて安心しておまかせいただけます。
まずは「話を聞いてみたい」だけでも構いません。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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